目次
獲得標高とは?累積標高の違って何ですか!?
ロードバイクに乗っていると、遅かれ早かれ「獲得標高」という言葉に行き着きます。
例えばロングライド、ブルベ、初めての山でヒルクライムをしたときなど、自分の頑張りを評価したり、みんなにその頑張った実績を讃えてほしくて「〇〇km走ったよ!」とか「獲得標高は〇〇mだった」という事実をFACEBOOKやSTRAVAなどのSNSで発信したりしますよね。
このときの距離とは、純粋にサイコンが示したいわゆる走行距離。2次元で言うところの”横軸”で表されるとします。
しかし、距離とは違って「獲得標高」という言葉を始めとする、いわゆる”縦軸”の線、つまり標高を測る単位の認識にはサイクリストの皆様の認識の違いがあることに気づきました。
趣味、実務を含めて標高という言葉をよく使うのは、例えば航空機のパイロットであったり気象台であったり登山家であったりと様々ですが、この方々が標高という数値を取り扱うのには、目標物の大きさ(高さ)を把握するための数値として捉えたり、または何かの目安にしたりとかなんでしょうけれど、自転車乗りが考える標高はちょっと違う気がします。
そもそも自転車乗りの場合、その山の標高とか海抜なんて興味はありません。いや、興味が無いと言えば語弊があるかも知れませんが、サイクリストが知りたいのは唯一つ、
どれだけの坂道を登ったか!
なのです。
また、意外に最大勾配とかも気にしますね.....笑。
一切の標高を気にしないか?というとそうでもなくて、例えばこれからヒルクライムをしようとしている山の標高によって自分の体に掛かる負担の目安を図るために標高によって、その大体を決定づけるところはあります。
しかし、先述の通りで、知りたいのはその山の標高ではなくて、自分が走る(走った)上り坂の合計なのです。
サイクリスト、特にヒルクライムを好んで行うロードバイク乗りにとっては、これから走ろうとするコースの上り坂の合計、つまりその坂(山)を登ることで自分の体に掛かる負荷の見当を付けたいという思惑があります。もしもそれが、ヒルクライムレースに出場するという事になれば、練習場所の選定や練習量なども考査しなければなりません。
端的に言えば、サイクリストは何事も 数値化 したいのです。
今回のテーマは、「その坂道の合計をなんて呼ぶの?」ということです。
という訳で、自転車乗りが使うべき「獲得標高」の真意について迫ってみたいと思います。
獲得標高をネットで検索してみる......
で、ネットで「獲得標高」という言葉を検索してみます。
すると、某Q&Aサイトなどでも同様の質問をしている方も居て、そのアンサーを見ているととても参考になるものもありつつ、しかし見解が様々.....。
ここでは、実際に自分が調べてみて拾い集めた情報を整理しつつ本当の獲得標高について自分なりに言及してみます。
まずは、QAサイトではどんな意見が集まっていたか?をまとめてみます。
【その1】スタート地点とゴール地点の標高差?
一番多いご意見がこれ。
ゴール地点とスタート地点の標高差。
例えば、スタート地点の標高が500m、ゴールに定めた地点の標高が1,000mとしましょう。
となると、1,000m - 500m = 500m 。
この場合の獲得標高は 500m ということになります。
しかし、ちょっと待ってください!。
例えば、漫画 弱虫ペダルで合宿所として登場したことでも知られる、伊豆修善寺のサイクルスポーツセンターなどの周回コースを走る場合を考えます。
周回コースとなるといくら起伏が激しくてアップダウンのあるコースだったとしても、スタート地点とゴール地点は一緒です。となれば、獲得標高はゼロとなってしまいます。
だってそうですよね!、
スタート地点の標高100m、ゴール地点の標高100m。
100m - 100m = 0m
コースの途中に 斜度15% 距離500m の激坂があろうがなかろうが、これでは獲得標高は0mとなってしまいます。
果たしてこれでいいのでしょうか?
なので、ゴール地点とスタート地点の標高差が「獲得標高」という理論は成立しない 事になります。
【その2】ルート上で登った坂道の合計
次にあった意見としては、「そのルート上で登った坂道の合計」という意見。
個人的にも「獲得標高」とは、単純に ”これだ!” と思っていました。
というか思いました。
サイクリストの皆様が実際に知りたいのはつまりこれなのです。
山の高さや海抜、またはスタート地点とゴール地点の標高差などではなくて、
自分が坂道に対してどれだけ頑張れたのか?
ということ。
正式にはルート上で登った坂道の合計は「累積標高」という呼び方をするそうです。
つまり、登った標高の総計ということになります。
もともとは山屋さんの用語だった
もともと「獲得標高」とは山登りをする方々が使われていた用語との事です。
山屋さんで言うところの獲得標高とは、ルート上の最高標高地点からスタート地点の標高を引いたものだそうです。
登山家の方の場合、目の前の山を登るという事が明確なので「最高地点 の標高ー スタート地点の標高」 で獲得標高を算出しても不都合は無いのだと思います。
なぜ登るのか?
「それは、そこに山があるからです!」
しかも、自分たちが登った坂道の「累積標高」を把握したいのではなく、あくまでも「〇〇m級のどこどこの〇〇山に登頂成功!」というのが登山家の方のステータスになるのでしょう。
結論:ロードバイク乗りにとっての獲得標高とは?
では、ロードバイク乗りにとっての「獲得標高」を結論づけたいと思います。
まずは、個人的な見解から。
(個人的見解】
これから書くのはあくまでも個人的見解ですが、2018年8月現在私が調べた限りでは、ロードバイク乗りにとっての獲得標高は、やはり 登った坂道の合計 では無いか?と考えます。
山屋さんの専門用語が自然と自転車業界に普及し始めたことで、それぞれの業界(カテゴリーまたはジャンル)に都合のいいように解釈・認識されたのが「獲得標高」なのでは無いのか?と。
つまり、山屋さんが言うところの「獲得標高」と、サイクリストが認識している「獲得標高」は決して同じものではないという気がします。
山屋さんが使う獲得標高は、先述の通りで「最高地点 の標高ー スタート地点の標高」なんでしょうけれど(間違っていたらゴメンナサイ)、ロードバイク乗りはこれを「コース上の坂道の合計」として認識している事が常識となっているように気づきました。
「獲得標高」についてJCAの見解を伺ってみた
このブログにて、私ごとき素人に毛が生えたものが偉そうに個人的な見解をなかば哲学のように語ったところで、いまこのページをご覧になっているサイクリストの皆様の疑問は果たして解消するのでしょうか?。
いえ、しないでしょうね。
皆様の本心は、
「お前の意見なんか聞いてない!真実をはよ!」
だと思います。
本当に獲得標高の真の意味が知りたいのならプロに聞くのが一番です。
そのプロの中でも、国内のロードバイクレースの取り仕切りからサイクリング指導者の育成、自転車の普及を促進するために組織された
日本サイクリング協会(以下JCA)さん
にメールで質問するのが一番と思い、早速メールで質問してみました。
以下、当方がお送りしたメールの抜粋です。
メールの内容
初めまして。
お伺いしたいことがありメールさせて頂いております。
~中略~
当方、「獲得標高」について調べています。
ロードバイクを使用したロードレースやヒルクライム競技において一般的に使用される「獲得標高」についてですが、ネット上では様々な意見が散見しているため、真実が知りたくで調べています。
獲得標高とは
①スタート地点からゴール地点の標高の差である
という意見と
②コース上において、登った坂道の合計である
という意見もあるようです。
JCAさんが認識している(現在のサイクリング業界での常識でも可)獲得標高の定義についてお示し頂ければと存じます。
ご回答のほど、宜しくお願い致します。
という質問に対して、その日のうちにJCAさんからとてもご丁寧な回答が来ました。
お問合せありがとうございます。
「獲得標高」とは、日本語の一般的な解釈として「個人のがんばりで獲得した値」という意味で、個人が山岳地帯でサイクリングを行った時に、そのコースの状況を説明する一つの要素として使うことが適切だと考えます。
ご質問の2つの見解、
①は乗鞍や蔵王の様に、スタートからゴールまで下り無しで上りのみ、のコースで、単に「スタート地点からゴール地点までの標高差」と同義語であるとも言えてしまいます。
②は、美しヶ原や鳥海山の様にコースの途中に下りがあるコースを走った時に、前述したとおり「個人がどれだけ上りをこなしたか」という意味と思います
従って「獲得標高」の定義は②である、という解釈です。
レースにおいては、完走者全員が同じコースを走ったので、個人の努力の結果である「獲得標高」という言葉を使うのは、意味が少しずれてしまうように思いますが、それでも使う側、受け取る側が納得していれば良いと思います。
「獲得標高」の数値を誰が出しているか、について、サイクリング大会やヒルクライムレースで主催者が公表していれば、それが「公式な数値」と理解して良いのですが、個人で発表している場合は、スタート地点の標高、下りにかかる頂点の標高、一端下って上りにかかる場所の標高、ゴール地点の標高、は行政機関が公認した数値であることを明記していなければ、あくまでも「参考」として理解する必要があると思います。
とてもわかり易い納得の説明ですね。
さすがJCAさんです。
担当者さんもきっとロードバイクのっているんでしょうね。
かなり核心をつく回答のように思います。
結論づけてみる
やはりJCAさんの見解の通り、
「個人の頑張りで獲得した標高の合計」
という事です。
ヒルクライムレースにおいては、コースによっては登って~下って~また登ってというセクションがある場合、自分が登った坂道の合計=自分が頑張った数値という認識で間違いないようです。
なので、先に紹介した通り、
ゴール地点の標高 ー スタート地点の標高 = 「獲得標高」
は間違いである、
とここでは結論づけます。
つまり、このゴールとスタート地点の標高の差というのは、単純に「標高差」という表現でいい訳であり、「獲得標高ではない」という事になります。
ご回答頂いたJCAのスタッフさん、貴重なご教授を頂き有難うございました。
累積標高とは?
累積標高という言葉もあります。
これに関しては、Q&Aサイトなどのネット上での解釈を見ていると、「ゴール標高ースタート標高が獲得標高だ」というご意見の方が、本来の獲得標高の意味で使われる表現法の代わりに「累積標高」という言葉で表現しているように感じました。
日本語的解釈で考えれば、累積標高というのはとてもわかり易いですね。むしろ、説明の必要も無いくらい。
だから、累積標高は誰が説明しても間違えた解釈は無いものと思います。
なので、今回のエントリーで改めて説明させて頂ければ、「累積標高」と「獲得標高」は同じ意味合いであるという事になります。
Garminで言うところの高度上昇値とは?
Garminのサイコンを使っている方は高度上昇値という言葉を聞いた事があると思います。
特にGarminのサイコンをPCに繋いで走行データの読み込みを行った時など、PCの画面上に「高度上昇値」という聞き慣れない言葉が表示されて焦る事があります。
実際には、これも「累積標高」、つまり、「獲得標高」の事のようです。
疑問に思わなくとも、実際のサイコンに表示されるデータがその数値に近い....というかイコールなので間違いないと思います。
しかしながら、Garmin Connect の翻訳、ひどいですよね。
いつになったらまともな表示になるのでしょうか?。
まとめ
今回は獲得標高についての疑問を呈し、結論付けてみました。
ネット上のQ&Aサイトには様々なご意見が出ていたので、自分でも収拾がつかなくなっていましたが、JCAさんのアンサーですべてが解決し、スッキリすることができました。
お陰でこうして記事にすることで、悩んでいる皆様のお役に少しでも立てられるかも知れないと思っています。
それでは。