究極の二択
これから初めてロードバイクを購入する方、もしくは中上級者でロードバイクの増車を予定している方で、まず真っ先に検討すべきは予算に応じたロードバイクの購入候補を選定する作業になりますよね。
厳密に言えば、予算が決まった時点でフレームの材質や強度、完成車コンポのランクがほとんど決まってしまうのが現実。ロードバイクの購入というのは、タイヤが付いている乗り物を購入する際のチョイスとしては、実は一番残酷な乗り物だと思うのは私だけでしょうか?。
勿論、予算の次に問題視しなければならない昨今の課題として、ブレーキの選定が挙げられます。
今回は、そんなロードバイクのブレーキについてのお話です。
要は、買うなら
ディスクブレーキなのか?、キャリパーブレーキなのか?
ということです。
私も先日、念願のエアロロードバイクの購入に至ったのですが、まぁディスクにするかキャリパーにするかで2ヶ月ほど悩みました。
何故悩むかと言いますと、ディスクにするかキャリパーにするかでフレームが決まってしまいます。それに予算が決まってフレームの材質が決まれば、あとはメーカーを絞るだけです。
つまり、ブレーキのシステム選定は、一度決めたら後戻り(後付け)は出来ません。
今風の自動車で言うところの、自動ブレーキ付きモデルを選ぶか無しのモデルを選ぶか?と言ったところでしょうか?。
今回は、そんな自分の経験談から、ディスクブレーキにするメリット・デメリット、キャリパーブレーキのメリット・デメリットについて迫ってみたいと思います。
キャリパーブレーキ
従来どおりと言いますか、ロードバイクお馴染みのキャリパーブレーキ。
上の画像は現行の シマノR-8000アルテグラ ですが、私も現在愛用していて最も信頼しているコンポーネントでもあります。
ブレーキレバーを握ることでワイヤーが作動し、キャリパー同士を機械的に引きつけてリム部分にゴムパッドを当て、リムの回転エネルギーを熱エネルギーに変換して減速します。
キャリパーブレーキのメリット
1.製品が成熟期にある
キャリパーブレーキのモデルとしての歴史は長く、熟成期に到達していてユーザーからの信頼も熱いです。
2.価格が安い
ディスクブレーキに対して重量が軽く抑えられるというメリットがあり、同時に空気抵抗も少なめです。
3.構造が単純でメカニカルトラブルが少ない
ワイヤーを引っ張ることで相対運動をする機構により、構造が単純で故障が少ないのも特徴の1つです。
4.アクスルはクイックリリースのまま
アクスル部分にキャリパー機構を配置するディスクブレーキと違い、ブレーキの機構をフロントはハンドルポスト下部、リアはシートポスト後部に配置するので、アクスル(ホイールとフレームを固定する仕様)は従来どおりのクイックリリースが採用されます。バイクのホイール交換、車載時などの手間はクイックリリース式のほうが一枚上手で手間が掛かりません。
キャリパーブレーキのデメリット
1.制動距離
ディスクブレーキに対して制動距離が長くなります。
これは構造的に仕方のない事です。
シマノのコンポーネントで言えば、105以下のブレーキは殆ど効きが悪いと思ったほうがよいです。
個人的に、制動力については、現行の R7000系105 でもちょっと物足りないです。
個人的なおススメとしては、完成車コンポがフル105だったとしても、ブレーキキャリパーだけはアルテグラにするべき。価格も15,000円程度で前後交換出来ます。
ブレーキは命を預ける自転車の中でも一番重要なパーツです。
一番最初にお金を掛けるべきは、軽量ホイールでもサイクルコンピューターでもなく、ブレーキとヘルメットだと個人的には思います。
2.天候に左右される
悪天候時、特に雨天時にはリムが雨で濡れることにより摩擦抵抗が激減するので、性能が100%発揮出来ない恐れがあります。
リムは路面に最も近い場所にあるため、路面の状況をもろに受けてしまう場所でもあります。路面が濡れていれば制動面であるリムもすぐに濡れてしまいます。
ゴムパッドとアルミリムの間に水が混入する事で摩擦が起きにくくなる原因になります。
3.コントロール性が悪い
ワイヤーを引っ張る事で相対運動をするという単純構造であるが故の問題として、細かいブレーキのコントロールを苦手とします。
ワイヤーを使う時点で物理的には機械式という事になりますので、これは構造上仕方がありません。
ちょっとだけブレーキを掛ける、全力でフルブレーキングする というポイントが曖昧で分かりづらいです。
ブラケットポジションのままのブレーキング、または下ハンでのブレーキングなど、ブレーキレバーの操作にも慣れが必要です。
4.カーボンホイールとの相性が悪い
近年注目されているカーボンホイールですが、キャリパーブレーキとの相性が悪いです。
カーボンホイールを購入すると大概の製品では専用のブレーキシューが付属されてきますが、カーボンにゴムのパッドを当てるので摩擦係数は極めて低く、制動力は期待出来ません。
雨の日のダウンヒルは特に注意が必要です。
また、ダウンヒルで長い間ブレーキングしていると、カーボン自体が熱によってやられてしまい、材質が変化して最悪の場合使い物にならなくなってしまいます。長いダウンヒルなどではーどなブレーキングをする場合、しっかりと熱管理してあげなければなりません。
冒頭で制動距離が長くなると書きましたが、R8000系アルテグラの場合はモデルの大幅な改変があり、キャリパーブレーキであっても制動力はほとんど問題なく、デメリットとは言い難いです。7000系105と8000系アルテグラを使っていますが、これからキャリパーブレーキを交換する予定の方は、ちょっと高くても絶対にR8000系アルテグラをオススメします。7000系105とは雲泥の差ですよ!。
ディスクブレーキ
ディスクブレーキは自動車やオートバイなどで広く使用されていることから、いまさら説明の必要はないとは思いますが改めて。
車輪とともに回転する”ローター”と呼ばれる金属の円盤をパッドで両側から挟み込む事で、ローターの回転エネルギーを熱エネルギーに変換して制動力を得る方式の制動装置になります。
自転車界ではマウンテンバイクやクロスバイクの10万円以上の完成車モデルであれば、最近ではディスクブレーキ標準装備が当たり前となっています。
しかしながら、最上級の軽さと運動性能を求めるロードバイクにおいては、まだまだ標準装備化の流れには至っていません。
数年前のロードレースにおいて、落車した選手がディスクブレーキの回転するローターで怪我をしたり、ブレーキが効き過ぎるあまりブレーキをロックさせて転倒し後続車を巻き込む大事故に繋がったりとトラブルが耐えません。しかも、これらは一流のプロ選手での話です。
ロードバイクがディスクブレーキ標準化の波に乗れなかったのは、このようにスピードを求めるロードバイクには必要のない装備ではないのか?という業界全体の意見が、そのような流れ(ディスクの標準化)を鈍化させてしまったのでは?と個人的には思っています。
ディスクブレーキのメリット
1.抜群の制動力
制動力は文句の付けようがありません。
一昔前は機械式でワイヤーを介してディスクの動作を制御していましたが、最近ではオートバイと同じく油圧式が採用されています。
男性に比べて手が小さく握力の弱い女性ライダーであっても、少ない力で大きな制動をかける事が出来るようになります。
2.全天候型
雨天時に弱いキャリパーブレーキに対して、ディスクブレーキは天候に左右されること無く、いかなる状況においても制動力を維持することが可能です。
実はこれがディスクブレーキ最大のメリットと唱える人も....。
3.コントロール性に優れている
ワイヤーで引っ張る機械式と違い油圧でコントロールするので、油圧式は細かいコントロールが可能です。
微妙な減速を強いられるとき、またフルブレーキングを掛けたいときなど、握力に応じて確実なストッピングパワーをもたらしてくてます。
4.放熱性能に優れている
剥き出しのディスクローターがタイヤの脇で周っているので、放熱性に優れています。
5.カーボンホイールのブレーキ問題を解決出来る
これについては、先述のキャリパーブレーキのデメリットで書いた、「カーボンホイールとの相性が悪い」 と真逆の話になりますが、ホイールのリム部分にゴムパッドを当てるキャリパーブレーキは、カーボンホイール装着時にはリムがアルミではなくカーボンにパッドを押し付けるので制動力が極端に悪くなりますが、ディスクブレーキの場合はリム制動ではなくてローター制動です。
ディスクブレーキは、ホイールの素材がアルミだろうがカーボンだろうが、ホイールの材質の影響を受けないということ。
ディスクブレーキに対応するカーボンホイールについては、2018年を堺に各社ラインナップが充実してきています。
キャリパー仕様のホイールに比べれば1割~2割ほど値段が上がってしまいますが、これは仕方の無いこと。
カーボンホイールでありながらダウンヒルでブレーキかけ放題って、ちょっと嬉しいですよね。
私はこれがディスクブレーキ最大のメリットだと思います。
ディスクブレーキのデメリット
1.価格が高価になる。
ブレーキローター、ディスク用ブレーキキャリパーなど、部品点数も多く装置も大掛かりになるので、価格が高価になりがちです。
そもそも、ディスクブレーキの制動力に応じたディスクブレーキ用専用フレームをチョイスしなければならないので、フレーム自体が高価になる傾向があります。
必然的に完成車価格もキャリパーブレーキに比べて高額になります。
2.重量増
若干ではありますが、重量が嵩みます。
R8000系アルテグラのキャリパーブレーキでは、フロント182g、リア178gで計360gであるのに対し、ディスクブレーキでは、SM-RT800油圧ディスクブレーキローターの重量が160mmで128g、140mmで108gで計233g。合わせてBR-R8070油圧ブレーキキャリパーの重量はフロントリアセットで280gとなる。
おさらいすると、キャリパーブレーキのシステム総重量は360g、ディスクブレーキ重量は513g,その差153g。150g程度で気にするのはもはやプロの世界の話かも知れませんが、気にする人は気にするようです。
3.輪行や車載が手間
キャリパーブレーキのアクスルがクイックリリースであるのに対し、ディスクブレーキはスルーアクスルとなるため、輪行や車載時にホイールを外すのに工具が必要になったりと、ちょっとばかり手間が掛かります。とは言っても、クイックリリースに比べての話ですけど。
4.ローターを曲げてしまうと走れなくなる
ローターは前輪と後輪のハブの外側に配置され、タイヤ(リム)と一緒に回転運動をしています。
輪行時や車載時、もしくは走行中に何かの障害物に接触したり、競技者同士で接触したことによりローターを曲げてしまうと、その後の走行が出来なくなる可能性があります。
このような事例は極まれかも知れませんが、キャリパーブレーキと比べるとリスクが1つ増える事だけは確かです。
5.フェード、ベーパーロックなどのメカニカルトラブルと隣合わせ
ブレーキを掛け続ける事によりブレーキ・パッド面が高音になることで、ブレーキ・パッドの材質が変化しブレーキが効かなくなるフェード現象。
また、高音になったブレーキから発生する熱でブレーキオイルが沸騰してしまい、オイルライン上に気泡が発生してブレーキが効かなくなるベーパーロック。
これらのいずれかのトラブルに見舞われる可能性があります。
自転車自体は軽い乗り物なのでブレーキを酷使すること自体それほど考えづらいのですが、標高の高い山などでのヒルクライムのあとの下山時など、長いダウンヒル中にブレーキを掛け続ける事が多いシチュエーションでは、このようなトラブルも出てしまう可能性があります。
6.メンテナンスが面倒
メンテナンスに関しても、定期的にブレーキオイルやブブレーキパッドの交換などが必要になってきます。
部品点数が多くなる分、メカニカルトラブルもある程度は予測しておかなかればなりません。
メンテナンスなど自分でやるのが苦手な方は、自転車やさんのご厄介にならなければなりませんね。
まとめ
今回はブレーキの二択について、ディスクブレーキとキャリパーブレーキについて考えてみました。
大手ロードバイクメーカーの新型バイクのラインナップを見ていると、2018年頃からの時代の流れとしては、ややディスクブレーキを普及させようとしているかのような動きにも見えます。
しかしながら、そのモデルの大半は、まだまだキャリパーブレーキが主流です。
ロードバイクのディスクブレーキについては、焦らずにもうちょっと様子をみたほうが良いのかも知れませんね。
それでは。