目次
はじめに
私はこれまでに、25年前に購入したクロモリ(鉄)バイクで様々なロードレースを走ってきました。
25年前のバイクともなると設計思想も当然ながら25年前のものとなるわけで、最新のロードバイクフレームの造形美と比較すると、さすがに時代の流れを感じずには居られません。
2018年現在のフレーム素材の主流はカーボンですが、カーボンこそようやく普及して価格もこなれてきた感が出始めてまだまだ4~5年といったところです。
現在ロードバイク用のフレームとして一般的に使用されている素材を例に上げれば、クロモリ、アルミ、カーボン、チタン、マグネシウム(順不同)が5大素材となっていますが、カーボンが主流となっても予算の都合や用途に合わせて、アルミやクロモリを敢えて選択するサイクリストも非常に多いのが現状です。
しかし、チタンやマグネシウムは、一部のトップ選手やマニアの間でしか使用されていない高価な素材ですので、今回の記事では触れていません。
私にあっては、今日までクロモリ1台でヒルクライムレースでやっとこさ走ってきた人間です....笑。
ロードバイクは
自身の身体能力8割、機材の性能2割
で勝負が決まるとも言われています。
これは諸先輩方から言われてきた事ですが、しかしながらこれが全ての選手やホビーライダーに対して当てはまるのでしょうか?ちょっと疑問に思います。
今回の記事では、長年愛用したクロモリからフルカーボンフレームに乗り換えた自分がどのような印象を受けたのかを書いてみたいと思います。
あ、誤解しないで下さい。クロモリフレームを捨てた訳では無いです(笑)。
フレーム素材の歴史
現在のロードバイクのフレーム素材の主流はカーボンファイバーですが、一世代前まではアルミフレームが主流でした。
1980年代 クロモリの全盛期
1990年代 アルミフレームが主流となる
2000年代 主流はあくまでもアルミ
しかし、フレームはアルミ、フロントフォークはカーボンというハイブリットがトレンドに
2010年代 フルカーボンの全盛期
2010年がフルカーボンの全盛期とはいえ、実際に多く出回るようになったのは2013年あたりからでは無いでしょか?。2010年前後はまだまだ消費者がカーボンフレームの価格に対しての価値を見いだせていなかったように思います。
つまり、カーボンフレームの価格に対するメリットをサイクリストが安易に受け入れていなかった、ということが言えるのでは無いでしょうか?あくまでも個人的な主観です。
この2010年代あたりからツール・ド・フランスや健康志向の煽りを受け、ロードバイクを趣味とするホビーライダーならぬサイクリスト人口が急増します。
これにはインターネットが光回線になり高速通信網が整備されたことや、地上波デジタル放送のサービス開始に伴いCSなどの有料放送が手軽に楽しめるようになり、海外のロードバイクレースをいつでも自宅で観ることが出来るようになったという時代背景もあります。
愛好家が増えることでロードバイクの需要が増えれば、メーカー側としてもカーボン素材の量産体制も敷きやすくなるため、さらに価格を抑える事が容易となります。
しかしながら、カーボンと一口に言ってもカーボンの素材も剛性の高いものから低いものまで一長一短であり、相当な価格差があるのも事実。
カーボンフレームは2018年現在においても高級フレームという認識は否定されておらず、フレームセットで30万から、アルテグラ完成車で40~60万というのが相場となっています。
二輪の中型バイクが新車で買えてしまいますね.....笑。
現代のフレーム素材
ロードバイクはフレームが変われば走りにどのような変化が現れるのでしょうか?。
一般的なユーザー目線で書いてみます。
クロームモリブデン鋼
クロームモリブデン鋼は、鉄に少量のクロムとモリブデンを添加した低合金鋼の一つで、ロードバイクの世界でもクロモリという名称で親しまれています。
特性としては優れた強度重要比があり加工がしやすいというのが特徴です。
フレームは細い管径であっても十分に強度を確保出来るので、細いフレームを見るとすぐに”クロモリ”とわかってしまうくらいで、最近では本当に少なくなったと思います。
レース会場でもあまり見かけません。
デメリットとしては酸化しやすい、つまり錆びやすいという事ですが、塗装皮膜を作ることで酸化を遅らせる事ができます。
つまり、塗装面を丁寧に扱えば、半永久的にフレームの強度を保つことができます。
注意点としては、塗装皮膜を形成している表面は酸化しにくいものの、フレームの内側が酸化し腐食を始めると酸化の進行を抑える事が難しくなるので注意が必要です。
アルミニウム
アルミニウムは鉄の約35%の比重であり密度も低いので、鉄の部類の中では軽量な部類に属します。
しかしながら、軽量であるが故のデメリットとして、ロードバイクのフレームとして使用する場合は管径を太く取らないと強度的な問題が生じるため、フレーム径が太くなってしまう影響で空気抵抗地が大きくなることが挙げられる。
一般的なクロモリフレームと比較すると、総重量ではアルミフレームのほうがはるかに軽量となる。
フレーム素材としては剛性が高く、クロモリと比較しても酸化しにくいため、フレームの中では長寿命であることがメリットの一つとなる。
一方で剛性が高いという事はフレーム事体がしならないため、ロングライドでは路面からの振動をフレームが吸収しないため、疲労感が高めとなる。
カーボンファイバー(炭素繊維)
アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を減量に高温で炭化して作った繊維。
炭素繊維であるが故に、金属ではないので重量はとても軽く酸化する心配もなく、重量に対しての強度は強い。
デメリットとしては、高度な加工技術を要すること、また、素材自体が高価なために、ロードバイクのフレームとしても高級な素材となるためにフレーム商品価格も高価となる。
また、瞬間的に生じる強い衝撃にもろく、一度形成した繊維に亀裂が入ると修復は難しくなる。
よって、ロードバイクのフレームとして用いる場合、事故や落車などで繊維に傷がついてしまうと、強度的な問題から修復困難となり、最悪の場合フレーム買い替えなどに迫られる場合がある。
素材の違いがもたらす走りの変化
と、いろいろとフレーム素材についてのメリット、デメリットを上げてみましたが、メリットやデメリットも去ることながら、これから新しいカーボンフレームのバイクを購入しようとしているユーザーさんにとっては、今現在使っているフレームよりも乗りやすいのか?速いのか?といったところだと思います。
乗り物全般に言える事ですが、本体重量が軽ければ軽いほど運動性能は大きく向上します。
特に人間の力で推進力を得る自転車については、自転車事体が軽いという事はそれだけ体に負担が掛からないという事になります。
実際に完成車重量が10kgを超えるクロモリのロードバイクを20数年乗り続けてきた私が、完成車重量8kg以下のフルカーボンに乗ってペダリングをしたときの最初の感想は
「軽っ!!」
でございました。
本当に軽いです。
フレームセットだけで購入して、自転車やさんでボトムブラケット、コンポ、ハンドルステムやらをバラで注文して組んでもらいました。
その都合で、フレーム単体から組み上げる前にフレームのみを計る機会に恵まれたのでフレーム重量も計量することができましたが、実測で1.3kgでした。
フルアルテグラで組んで、ホイールをカンパニョーロのZONDAで組んだ結果、組み上げ後の総重量は7.8kgでした。
クロモリバイクの完成車重量が10.7kgでしたので、カーボンバイクとの重量差はなんと2.9kg!。
イメージとしては、スーパーで売られている上白糖1kg入りが3つぶんフレームから取り除かれた.....という感じです。
漕ぎ出しも軽くバイク事体も軽いので中間加速もスムーズ、巡航速度の時速30km/hに持っていくのもとても楽です。
加速が良いということは目標の巡航速度に到達するまでの時間が短くて済むという事ですから、レースの場面で考えるとトータルタイムを縮める効果が期待出来ます。
バイクが軽い事で受けるもう一つのメリットとしては、脚に負担の掛かるヒルクライムやロングライドでも顕著に現れます。
ヒルクライムは先述の通りでタイム短縮にも貢献します。
100kmを超えるようなロングライドでも、脚が売り切れるタイミングを遅らせる事が出来ます。つまり、疲労感を感じるのが遅くなるということ。
あわよくば脚の売り切れを心配することが半減します。
バイク自体の軽さというのは、それだけ体に受けるダメージも軽くなるという事の証明なのだと思います。
しかしながら、これらは完成車のホイールが鉄下駄のままでは意味がありません。
前後重量1.6kg以下の計量ホイールを履くことで、カーボンフレームの軽さが更に活きてくると思っています。むしろ、フレームがカーボンなのに鉄下駄を履いていては勿体無いと感じます。
予算の都合もあるでしょうけれど、少しでも早く軽量ホイールも組み入れたいものです。
エアロ性能もあなどれない要素
近年のロードバイクは、その使用する用途によってフレーム形状を微妙に変えたり、カーボンの素材のランクを変える事によって、レース用・グランドツーリング用・ヒルクライム用・トラック競技用・トライアスロン競技用など、用途に応じて独自設計し、ユーザーの使用用途によって製品を選択する幅を与えるという事も、各メーカーすっかり定着してきました。
例えばツール・ド・フランスで使用されたプロ用機材と同じものを一般人が購入出来るという事も、お金さえあれば出来てしまう時代となったというのは喜ぶべき事ではないでしょうか?。
一歩間違うと、ただの金持ちの道楽にもなりかねませけどね.....笑。
そんな中で、ピナレロやサーヴェロ、S-Works、FELTなどのフレームメーカーで主流となっているのがエアロバイクです。
エアロバイクは空力性能に特に磨きを掛けて、cd値を極限にまで抑える事で少ないパワーで多くの推進力が得られるように毎年開発が進められています。
フロントフォークやハンドルポストなどの形状も風を後方に逃しやすい形となっていたり、ダウンチューブ部分はボトルを置くことを前提にフレーム形状が工夫された加工が施されていたりと、見ていると本当に関心してしまいます。
実際にそれがどのくらい凄い事なのかと言うと、20年前のクロモリバイクから最新のエアロバイクへと乗り換えた私が一番最初に気づいたのがこのエアロ性能の凄さでした。
風を切ります。
特に向かい風のときはよく分かります。
フロントフォークが風を切って後方に流してくれているのが、短パンを履いている素足で感じ取れるくらいです。
風が強いときにはかぜを切っている音がすることもよくあります。
これは20年前のクロモリロードでは味わえなかった衝撃でもありました。
20年の間にロードバイクはここまで進化したのか.....と思わせるエアロ性能です。
一方でエアロバイクのデメリットというのもあって、空気抵抗を極限まで抑える用途な何か?というと、その理由はただひとつ.......
レースで勝つため
なんですが、そんなエアロバイクはフレーム自体の剛性を高くしてペダリングのちからを路面に伝えやすくしているのが最大の特徴です。
つまり、剛性が高いという事は、フレーム自体が硬いということ。硬いという事は、ロングライドなどでは路面の振動がもろに体に伝わるので、とても疲れやすくなってしまいます。
レースで勝つためにエアロ性能を追求するあまりフレーム自体が硬くなる。
フレームが硬くなるとロングライド等では疲れやすいバイクとなってしまう、皮肉なものです。
なので、フルカーボンのエアロバイクを購入するのなら、その点も考慮して購入計画を立てると良いと思います。
初心者がいきなり高級カーボンバイクでデビューってどうなの?
ちょっとフレームの話から逸れてしまいますが、カーボンエアロバイクに付属するコンポーネントは、シマノであれば105、アルテグラ、デュラエースのどれかになると思われます。
105完成車であってもご予算的には40万~50万の間と思われます。
もうクルマで言ったら高級車の部類ですね.....汗。
勿論、この選択肢はある程度の経験を積んだサイクリストで中級者から上級者向けの製品になると思われますが、お金に余裕があるんだったら初心者でもアリだと思います。
どこかのサイトでは、
「初心者はまず10万円くらいの完成車を買って、走り込んで実力が付いてから高級バイクを買いましょう」
なんて勧めているサイトもありましたが...。
これはこれで正解だと思います。
しかし、高~い高級カーボンバイクにも将来的に乗ってみたいと思っていて、その想いが本物ならば最初から高いバイクを乗るべきです。
だって、最初に投資した安いロードバイク分の10万円がもったいないですもん。
それなら最初からローンを組んで50万のカーボンバイクを買って、安いバイクを買うつもりだった10万円で軽量ホイールを買うほうがよほど効率が良いです。
問題は、その人がどのくらいロードバイク熱があるかどうか?という事です。
ヤフオクやメルカリなどで高級バイクを出品している人で、
「数年前に衝動買いしてしまいましたが、乗らなくなったので出品します」
的なコメントをよく見かけます。
見れば完成車でも30~40万クラスのバイクです。
これではお金が勿体無いですね。せっかく高い金を出してバイクを買ったのに途中で飽きて辞めてしまう。
でも、初心者なら多少のリスクを覚悟のうえで、そんな中古バイクを割り切って購入するもの手ですね。
つまり、自分はどのくらいバイクにのめり込めそうなのか?をしつこいくらい自分自身に自問自答することです。
半年くらい悩んでも良いと思いまます。
私はサーヴェロのバイクを買うまでに1年間迷いました。
でもこれは、クロモリのロードバイクがあったから悩んでいる間もバイクに乗れていたというオチがあります。
活きた金を効率よく使うのなら、最初から高級バイクもアリだと思いますよ。
そのほうがバイクも大事に扱うと思います。ローンを組んで購入したのならなおさらです。
自分にはどの方法が最も良いのか?周囲の先輩方の意見も聞きながら最良の判断をして、是非充実したバイクライフを送って下さい。
自分のロードバイク熱がどの程度なのか?がよくわからないという方は、やはり安い完成車を買ってガンガン走り込んでからカーボンにステップアップするというのが王道だと思います。
持論:もしも能力が全く同じ選手同士がヒルクライム勝負をしたら?
私がカーボンバイクを購入しようとしたとき、先輩にある一言を言われました。
「カーボンのバイクを買っても、バイクは所詮人間の脚だぞ!」
それは確かに聞く言葉でした。
冒頭でも書きましたが、ロードバイクは 自身の身体能力8割、機材の性能2割 とするのならば、自分が高いカーボンバイクを買ったからとてヒルクライムでタイムを縮められないのか?ということを考えます。
確かに、高いバイクを買えば重量を抑えられて”軽さ”という武器を新たに所有するメリットがあります。
しかし、機材を変えても2割しか結果が改善されないのなら、軽量のカーボンバイクを買う意味なんで無いのでしょうか?。
いや、逆の発想でよくよく考えると、この2割の改善が見込めるのであればむしろ買うべきなのでは?と思います。
ヒルクライムタイムが2割短縮出来るのなら、誰だって新バイク購入を考えると思います。
例えば、能力もコンディションも全く同じ選手が二人居たとします。
A選手には重量11kgのクロモリバイクで、B選手には重量8kgのカーボンバイクでヒルクライムに挑戦してもらいます。
結果は如何に?と考えた場合、どちらに分があるでしょうか?
パフォーマンスが一緒ならば、間違いなくB選手のほうが優位なのは言うまでもありません。
別の言い方で例えれば、
速い人ほど機材にこだわり高いバイクを求め、軽量カーボンホイール、コンポ類のパーツの吟味に余念がありません。
一方の遅い人は機材への拘りもなく、人からもらったようなクロモリのロードバイクに乗っていて、ヒルクライムレースに出ようとしています。
これで後者の人が前者に勝てるイメージを皆が抱くか?ということ。本人こそ重いロードバイクで軽いバイクの選手に戦いを挑んで勝ちたいと本気で思えるのか?という事です。
つまり、レースで少しでも上位に食い込みたいと思うのなら、遅い人ほど機材に拘って速い人に近づける努力をするべきと考えます。
これはレースで勝つためです。
レースとは一切無関係で、趣味でロングライドしながらゆっくりロードバイクを楽しみたいと言うのであれば、逆に高級なエアロバイクで無くても良くなります。
自分の経験談:カーボンで確実に速くなった!
実際に自分がサーヴェロを買ってみてどうだったか?と言うと、いつもの近所の練習コースで確かにタイムは縮まりました。しかも2割きっかりです。
バイクはペダリングのたびに”軽さ”を感じるし、向かい風でも追い風でも”エアロ性能”がとても良いことに驚かされます。
どう表現していいのか難しいのですが、”風を切り裂きながら前に突き進む”感覚です。
先輩が放った「所詮人間の脚だぞ!」という言葉の真意は、「新しいバイクを買ったからとて、浮かれてないでしっかり練習をして走り込め!」という、言わば「自分に向けたエールだったのでは?」と思います。
確かにいいバイクに乗っていたとしても、バイクの性能に負けないくらいのパフォーマンスで走らないと、レースでも周囲の選手から笑われてしまいかねません。
ピナレロのドグマに乗ったからとて、必ず表彰台に乗れるという保証は無いのです。
やはりロードバイクに乗る以上は自分を鍛え上げながら、努力を惜しまず、常に恥ずかしくない走りをしなければならいのだと感じます。
ちょっとお固い考えかも知れませんが、それがロードバイクの醍醐味では無いのかな?と考えます。
だから自転車は人生を熱くするのだと思いますよ!。
まとめ
今回はクロモリフレームとカーボンフレームの違いを比べてみました。
エアロバーボンバイクは”硬い”と言われますが、私はそこまで気になりませんでした。
長らくクロモリに乗ってきたからこそ違いには敏感に感じ取れる部分があると自負していますが、エアロカーボンはとにかくペダリングに無駄がないといった印象です。
漕げばこぐほどに前にぐんぐん進むという感じです。
クロモリやアルミからカーボンに乗り換えようとされる方は多いと思います。レース会場へひとたび出向けばカーボンバイクの多いことに驚かされますが、クロモリやアルミもまだまだ健在です。
自分がクロモリでいいと思ったらずっとクロモリでも良いと思うし、アルミは硬いけれど推進力はカーボンよりも優れていると思えばアルミを使い続ければいいと思います。
理想はカーボンフレームの他にもう一つのフレームのバイクが所有出来れば最高ですね。
今回はクロモリとカーボンバイクの違いについて書いてみました。
お役に立てられれば幸いです。
それでは。